2009年 06月 24日
簿記教育について |
何をするにも時間が足りません。コラムです。先週参加した簿記学会関東部会の統一論題が『高大連携と簿記教育のあり方』だったので、それにちなんで駄文をお送りします。少なからず教壇に立っている身として、簿記教育についての悩みは少なくありません。現在の会計は、昨今の新会計基準と従来の企業会計原則を中心とした動態論会計が混在し、まさに混沌としているため、首尾一貫した説明を行うのは非常に難しいです。勘のいい学生からの鋭い指摘なんかあると、「違和感あるかもしれないけど、そーなってるんだよねー」みたいに言い逃れしてしまいます(場合によってはです)。梅原先生の報告にあった、取引記録を基礎とした従来の複式簿記の捉え方や「企業会計原則」の枠組みをそのまま適用することの困難性や資本等式とは別個の前提に立つ「株主資本」の解釈を改めて示す必要性というのは、端的に現状を指摘されていると思いました。まあ、ここらへんの理論的解決は、会計学者のこれからの仕事だと思います。大学における簿記教育で悩ましいのは、入学時の学習レベルが商業高校出身者とその他普通科などの出身者で大きく差があることです。商業高校出身者は、ある程度学習済みで、日商簿記2級取得者もぼちぼちいます。一方、簿記という言葉を聞いたことのない学生が大半です。また、簿記検定という検定試験向けの学習スタイルと、簿記原理、会計学原理といった原理原則を教える学習スタイルの相違による問題。基本的に、大学では原理原則を重視した講義を行うべきだと考えています。検定向けの学習スタイルは、理解不足による学習の発展性の阻害になると思っていますので。比較的商業高校出身者に機械的に処理を覚えている学生が多いように見受けられ、入学時点ではダントツの実力があるのですが、その後伸び悩んでしまうことが多いです。問題のパターンの暗記という勉強に陥って、延々と検定に落ち続けるという状況も目にします。資格試験というのは、基本的に問題演習の繰り返しによる暗記になるのは仕方がないのですが、受験テクニックばかり追求していく勉強方法は、やはり発展性を感じません。特に、今後“原則主義”が採用される流れなので、細かい機械的な処理の暗記ではなく、原理原則を理解し、どんな取引にも柔軟に対応できる応用力が必要になるはずです。個人的には、簿記の構造というのは、日商3級レベルを完全に理解していれば十分だと思っていますし、あとは、理論をしっかり理解して身につけていれば、どんな複雑な取引でも基準なりテキスト片手に処理できると思います。“しーくりくりし”の意味はわからないけど、とにかくやるもんだと思っている学生の皆さんには、声を大にして言いたいものです。
by yangyi0312
| 2009-06-24 01:27
| 独り言