2009年 01月 27日
プロシクリカリティーと会計 |
あっという間に前回から1ヶ月。明けましておめでとうございます。コラムです。相変わらず、巷では景気の悪いニュースが多いですね。利益(課税所得)の減少によって、繰延税金資産の取り崩しも相次いでいるとか。雇用情勢も悪化の一途を辿っていますが、正規雇用ではないにせよ、何とか食い繋いでいる自分は恵まれている方なのかもしれません。さて、先ほど繰延税金資産の取崩しの話をしましたが、この不確実な時代、見積もりによる会計数値というものに、どれほど信頼性があるのか改めて考えさせられます。昨今の時価会計の緩和においては、投売り状態になっている金融商品については、経営者が合理的に算定した価格を時価として認めるとして、主観的な見積もりの容認する向きがありますが、何をもって公正価値(fair value)とするのかも難しいところです。先月の日経に、「時価会計には、不況下の停止論が亡霊のようにつきまとう。」なんていう面白い記事があったのですが、確かに時価会計にはプロシクリカリティー(景気循環の増幅効果)があるように思います。好景気時には、活況な市場や経済を背景に時価による評価益が膨らみ、益々企業業績に弾みがつき、景気後退時には、市場や経済の低迷により時価による評価損が計上され、益々企業業績が落ち込むという一連の会計と企業業績のシンパシー。会計理論の変化は、主として産業構造の変化と結びつくものと考えますが、取得原価主義、時価主義の選択は、もっと政治的な側面が強く、景気の良し悪しも非常に関連性があるのではないかと思います。取得原価と時価の選択が経済的背景によって振れるようでは、期間比較に支障をきたし、正確な企業実態を表しているとは言えません。長い目で見て、現在の会計制度が使用可能なものか、経済の変化に耐えうる原理原則を導き出したものなのか、問われるところです。景気変動と時価評価損益の関連性や景気変動と会計基準の性格の関連を調べるのも面白そうです。さて、私がちんたらしていたせいか、先月にIASB/FASBの収益認識プロジェクトのDPが出ていたことも見逃していて、最近やっと手をつけ始めたところです(ちなみにコメント期間は今月19日に終了しています)。何をもって収益とするのかという会計上、大変重要なこの議論、DPではこれまでの議論どおり、認識については、契約にかかる債権・債務(履行義務)をベースに行うことが基本とされ、測定については、現在出口価格アプローチ(Current exit price approach)と原取引価格アプローチ(Original transaction price approach)を扱っています。それにしても、時間がない。これは言わない約束でした。
by yangyi0312
| 2009-01-27 23:14
| 会計一般