2020年 03月 04日
債務超過 |
山口県でもCOVID19の感染が確認されました。早く収束してくれるとよいのですが。コラムです。今回は債務超過。最近、米国企業で増加していることが話題になることが多いので書いてみることにしました。日本で債務超過と言えば、=倒産というイメージがあります。これは実際に債務超過となると、融資が止まったり、上場企業であれば上場廃止になったりすることから当然のことだと思います。企業の安全性を見る場合、自己資本比率は代表的な指標の一つになります。そんな倒産を連想させる債務超過ですが、昨年(2019年)S&P500社中24社もあったそうです。リーマンショックの2008年でも17社ということなので多いといってよいでしょう。ちなみに、そのなかにはマック(△82億ドル)やスタバ(△62億ドル)も入っています。また、その債務超過額合計は650億ドル(約7兆2,000億円)とこちらもリーマンショック以来の高水準だそうです。ただ、景気はドン底の2008年とは真逆でして、拡大が続きダウ平均も3万ドルを目指す展開でした(コロナがなければ)。どうしてこんなことが起きているのかというと、その原因は企業の財務戦略にある様です。その戦略とは、WACCを下げることで企業価値を上げるというものです。WACCは、負債資本コスト(利子率)と株主資本コストを加重平均したものです。株主資本コストはCAPM(資本資産評価モデル)で計算するとβ値にもよりますが、基本的に負債資本コストより高くなる(債権者より株主の方がリスクは高いですから)ため、負債を相対的に増やす(=株主資本を相対的に減らす)とWACCは下がります。WACCが下がれば、将来CFの割引現在価値である企業価値は、割引率(WACCを使用)が下がるので大きくなり、市場評価の向上に結びつくことになる、という計算上の理屈です。具体的には、財務レバレッジをかけて資本効率を上げる手段として、借金をして自社株買いをするというものです。総資本が変わらなければ、負債を増やすなり、株主資本を減らせば、ROEが上がる(株主が喜ぶ)のはわかると思います。あと、FCF(営業CF+投資CF)の黒字が続く見通しがあれば、返済が滞ることはないという認識で、債務超過であっても安全性に問題はないという文化が後押ししているようです。この代表格がアップルで、2019年の自社株買いが788億ドル、純利益の1.4倍の資金で資本を取り崩し、株価は年間で80%値上がりしたそうです。2012年9月期は無借金だったのに、今は有利子負債が自己資本を上回っているとか。財務の健全性より利益を株主還元することを優先する意識が強いとのことですが、純利益と同水準の自社株買いと配当の実施が継続可能なのかというのは疑問ですし、資本って資産を負債より多めにしておく重要概念で、やっぱマイナスはダメでしょうと思う日本人の私がいます。おわり
by yangyi0312
| 2020-03-04 17:39
| 会計一般