2020年 02月 01日
高専 |
せっかく高専の教員になったので、新鮮味のあるうちに「高専」について書いてみます。コラムです(10年ぶり)。高専とは、中学卒業段階で入学する5年制の高等教育機関(なので、在学生は生徒ではなく学生)です。近年、中高6年を一貫教育する中高一貫校や高大連携といった高校と大学の接続教育が話題ですが、高専は高大一貫校と言えるでしょう。中卒から大卒までを一貫で教育しているわけですから。ちなみに、5年制の本科を卒業すると短大と同じ準学士、その後2年制の専攻科を修了すると学士の学位が与えられます。高専制度は、1961年に創設されているので2020年で59年を迎えます。創設された背景は、高度経済成長下の技術者需要増への対応で、短期間での大卒並の専門人材養成を目指したものです。工業系に限定されていたのも、そのような背景からであり、国立の5年一貫の充実した専門教育と高い就職率は、創設当時からの伝統と言えるでしょう。ただ、そんな時代はとうの昔に終わっており、当初の話は今や昔話、という感があります(進路実績は質量ともに現在も良好です)。あと規模が小さいので、知名度が低く、マイノリティー感が否めません。ただ、1学科40名という枠での少人数教育は貴重です。私大文系出身の私からすると、講義が最大40名、ゼミ(研究室)に学生が1学年4名程度というのは、驚愕の少人数教育です。専攻科に至っては、1学年1名いるかいないかなので、指導体制は大学院レベルだと思います。マイナーと言えば、私の所属している経営情報学科は、国立51高専に3つしかない文系学科の一つなので、マイナー中のマイナー、毎年全国で120名しか入学しない文系高専生の集う教育空間です。私が高専で最もいいなと思っているのは、中学卒業段階から、専門を博士号持ちの研究者から学べるというところです(持ってなくてすみません)。また、専門に限らず、国数英、社会のような教養科目を教えるのも研究者なので、知識の深さと専門に対する情熱はなかなかのものがあると思っています。この環境と比べると高校(特に普通科)で3年間過ごすのが勿体ないと感じてしまいます。とは言え、その力を発揮できるかは、学生の目的意識やモチベーション如何なので、ワクワクするような教育がされているかというと別問題です(教育って難しいですね)。あと、宇部高専に来て進んでるなぁと思ったのは、クウォーター制、グローバル人材育成、インターンシップ、PBLとかなのですが、並べてみると文科省の政策そのものですね(どこの大学でもやってるやつです)。クウォーター制は、週1だった授業が週2になったりして、短期間で集中して学習するカリキュラムになっているようです。通年履修で休みを挟みながらダラダラやってた自分たちの世代からすると、シラバスも完全ルーブリック仕様ですし、隔世の感があります。さらに2Qは、座学はせず、学科学年横断でプロジェクト学習等に充てています。教員・学生が様々な課題解決型のプロジェクトを企画して、学生が選択してプロジェクトに所属するというのは面白いなぁと思いました。これ以外に地域の課題解決に特化したプロジェクト型の授業(夏休み期間)もあるようです。高校の探究科がやっているようなものに近いのかもしれません。また、2Qと夏休みを利用して、長期の海外研修やインターンシップに充てることもできます。グローバル人材育成については、長期の海外派遣プログラムに年間100名以上参加ということなので、10人に1人(学生数1,000名)は海外に出ているようです。内容も海外の大学に行って、共同研究を行うとかは単なる語学研修と比べて、本格的だなぁと思いました。通常の講義においても、毎回の学習内容を英語でまとめることをしていますし、研究・インターンシップ報告会においても、レジュメや口頭発表では、冒頭は英語による報告がされています。恥ずかしながら学生の方が経験値が高いです(汗)。インターンシップは、行くものだという認識でみんな行ってますね(単位目的のようですが)。ラインナップもしっかりしていて、さすが高専といったところです。長くなってきたのでまとめますと、文科省主導で行われている大学改革の内容を先んじて実施しているイメージを持ちました。組織自体も、独法化時点で国立高専51校を1つの法人にぶら下げて一括運営しているのは、現在、複数大学を一法人で運営する仕組みが国立大で進もうとしていますが、その完成形のように映ります。とは言え、改革が進めやすいのは、教授会がないというのが一番大きいように思いますね。トップダウンで進められるのは、文科省的には動かし易いはずです。そのような取組みが評価されているのか、ここのところ予算も重点的に配分されているようです。最後に1点、しょうがないんですけど40人学級で人間関係が長期に渡って固定されているのは、自分だったらキツいなぁと思います。
by yangyi0312
| 2020-02-01 09:19
| 独り言