2004年 11月 08日
企業買収価値 |
これといって書くこともなく、サボり気味のコラムです。ということで、先月31日に日経にでかでかと載っていた企業買収価値について何かしら書いていこうと思います。まあ、この金額がどの程度適正な金額と言えるのかは何とも言えませんが、トップはトヨタの18兆4,297億円です。売上高が17兆円で、純利益で1兆1,000億円を稼ぐ企業ですから、このくらいの価値はあるでしょうね。この企業買収価値は、株式時価総額と有利子負債の合計から金融資産を差し引いた金額として計算されています。要は、その企業の株を全部買い占めて、有利子負債を全部返すお金が企業の資産価値であるということです。これに、現金やすぐに現金化できる有価証券などの金融資産を差し引くわけですね(すぐに有利子負債の返済にまわせるものですから)。この企業買収価値の計算は、企業を分析する場合のいろいろな観点の複雑さがよく表れていると思います。ポイントは、株価と有利子負債でしょうね。株価については、その上昇と下落によって買収価値そのものに影響を与えるほか、企業のもつ金融資産にも影響を及ぼします。自社の株価が上昇(下落)すれば買収価値も増加(減少)します。また、自社の持っている株式の株価が上昇(下落)すれば、買収価値は減少(増加)します。何とも皮肉なことです。次に、有利子負債について。有利子負債の増減は、多くのパターンが考えられます。数字上だけで見ると有利子負債の増加は、買収価値の増加に繋がります。しかし、株式市場において、その有利子負債の増加が悪材料と判断された場合は、株価の下落を招き、その分買収価値は減少することになります。逆に、有利子負債の減少は、数字上で見る限りでは買収価値を減少させる要因となりますが、株式市場において好材料と判断された場合は、株価の上昇とともにその分買収価値は増加することになるわけです。株価の推移を予測するのは難しいですが、投資家の心理としてこの有利子負債には相反する二つの考え方があります。素直に考えれば有利子負債の減少は、財務基盤の強化であり企業の安定性としては非常に重要だと思われます。しかし、有利子負債の増加によって事業を拡大するのであれば、将来性が期待されるとともに資本効率が上がりROEが高くなるという投資家には喜ばしいという一面もあるわけです。まあ、つまるところはその企業の事業環境がネックになるわけですけど。その他、この企業買収価値のポイントは18面左下に書いてありますが、会計人としては「②含み損の存在」が注目すべき点でしょうね。話は変わりますが、現在の会計は予測価値を使用した企業の現在価値を示そうとする方向に進んでいますが、それは会計の範囲を逸脱してはいないでしょうか。会計には会計だけがすべきこと、できること(事実の開示)があるわけですから、過度の予測を含む企業価値の評価などは、他でやってもらえばいんです。その基礎資料の一つとして会計情報を使用して頂ければいい話だと私なんかは思いますが。
by yangyi0312
| 2004-11-08 01:14
| 会計一般